ENGISYA短編戯曲集

『MIROKU』

(アラタナ・人・女三部作)

「姉は、誰よりも繊細だった。そして脆かった。姉の中にはいつも二人の女性がいた。一人はいつも元気で前向きな女性。もう一人は、いつも膝を抱え震えていた。生命の光を遮られ、自信を失いただ怯えている。その二人が同時に存在するとき姉はいつも悲しい眼差しをした。ただその眼差しを、私は嫌いじゃなかった。どこか、ずっと、深かった。」


人生になんの期待も抱けない南無(なも)。その姉・弥勒は次々と夢を追いかけては立ち止まりを繰り返す。
姉は一体何を探しているのか?
希望と絶望の間を行き来する弥勒にはある運命が待っていた。

『宇宙の友達』

(アラタナ・人・女三部作)

「ねえボダイ、なんで私が泣こうとするといつもタバコ買いに行くの?」

「私の星では皆んな、泣かない。というか、泣く必要がないの。」

「どうして泣く必要がないの?そんなこと信じられない。」

「聡美が泣き止んだら、答えてあげる。」


恋人に振られ落ち込む聡美に、自称・宇宙人のボダイは宇宙船を見せてあげると誘う。そこで聡美が見たものは...。
時空を超えて繋がる、二人の絆と痛みの物語。

『蛍』

(アラタナ・人・女三部作)

「いるはずのない、自分の娘の幻覚と話すまでになった私は、本当に頭がおかしくなったんだろう。」


自分のことを“母”と呼ぶ”沙耶香”に見守られ、躁鬱病と戦う女。
自分がおかしいのか?それとも世界がおかしいのか?そして“沙耶香”は一体何者なのか。
見放された二人の、蛍のようにか弱く美しい魂が巡り合う。

『お日様に帰ろう』

(演氣者塾短編戯曲集)

「私の根っこ、どこに繋がってるんだろう?それとも、もう切れちゃったのかな」


田舎から上京して、カメラマンとして働く輝子。忙しい日々の中で自分が本当に撮りたかったものを見失い、自信を失ってしまった。
そんな彼女のもとに突然現れた幼馴染みの夕雨。
そして輝子は本当の自分を思い出していく。

『ひめゆりの羽根』

(演氣者塾短編戯曲集)

「私、お羽根ねえやんになるの。」

「お羽根ねえやん?」

「羽根が生えてきたの」

太平洋戦争末期。ひめゆり学徒隊として従軍した女子二人。

光を選んだ女。

光と闇で揺らぐ女、

そして闇へ誘う存在。

それぞれの想いと正義が時を超えてぶつかりあう。

『ほんとうの恋愛』

(演氣者塾短編戯曲集)

「ほんとうのこと言って。 もう私に飽きたの?」
「違う。たぶん、遅ればせながら僕に、思春期がやってきたのだと思う。」
「思春期?!」
「素敵な人と同じ風景や景色を見ることより、 SEX の素敵な人とずっと交わっていたい。」
「なにそれ??!!普通、順番が逆じゃない?」

貴之と恋人でありながら、 ただひとりで生きたいと思う瀧子。
体の関係を持たない恋人同士の真理衣と雅人。
そして堅実でありながら少し電波な女・咲子も加わり、ピロートークで語られる奇妙な恋愛物語。

『歌で伝える人』

(人間ルネサンスシリーズ)

「愛と平和の日々だぜ、ベイビー!満ちたりているぜ、ロックンロール
…。
何だこの感じは?なんだこの情性は?これじゃただのオッサンだろう?
なんだか強烈に…寂しい。」

ステージを抜け出し、草原に寝転ぶ往年のロックミュージシャン。ひとり閉々と悩む男をよそに、ぷかぷか浮かぶ雲、 ブンプンと飛び回る虫。ボウボウと生い茂る草。そして静寂が訪れ…。

故忌野清志郎に捧げる物語。

『写し撮る人』

(人間ルネサンスシリーズ)

「一つ処にいられない
青臭い僕からの
君への
蒼い、最後の手紙です」

灰となって妻のもとへ帰ってきた戦場カメラマン。

妻から語られる二人の出会
い。

そして届いた、最後の手紙。

『神風吹く人』

(人間ルネサンスシリーズ)

「美しい虚構。
それは恐ろしい虚構を忘れるためにか。
それならば私もまた虚構の中に沈黙を守る。」

現代をさまよう神風特別攻撃隊の若き隊士の幽霊。とある大木の下で若い女性と出会い、会話を交わす…。

『文豪の人』

(人間ルネサンスシリーズ)

「現実。嫌いな言葉だ。クソみたいなもんだ。現実なんて所詮、それぞれの頭の中にあるだけで、後生大事
に守るような代物じゃねえ。夢や想像の方がまだ立派さ。」

かつての文学青年、今は冴えない中年の男はリストラ・離婚と、人生の窮地に立たされ、芥川龍之介に救いを求める。
眠りから覚めた芥川龍之介は中年男と一緒に東京の街を散歩し、掴み所のない言動で男を困惑させる…。

『幕末の人』

(人間ルネサンスシリーズ)

「おまんの命、どこまで
高みに行きたい?
どこまで拡げたい?
池かや?
それとも海かや?」

政治家一家に生まれついたホストの青年。時々幽霊に出くわす青年は、ある日ラブホ街でしゃがみ込んでる志士の幽霊に出会う。
志士の話を聞いていくうち、青年は忘れていた過去を思い出していくが…。

『ぱふぉーま』

(大野舞踏に捧ぐ演劇)


『SOUL OF PLAYER』

(未童初期三部作)

「わたしが無我夢中で、一生懸命で、そんなとき、
わたしがどこにもいなくってただやるとき。それを見ている人に無心でただ喜んでもらう。わたしの、全身全霊で、その一瞬を、掴みたい。」

光が強ければ、その分影も濃くなる。
俳優養成所同期4人、明暗別れるスターへの道を軽快に描く青春コメディー。

『いっそ、生きたい』

(未童初期三部作)

「セイちゃん、公園で一緒に子猫見つけたね、真白な。…また見つけてね」

ストリッパーのケイコとそのヒモのセイジ。
ケイコの亡き後、廃品回収で日銭を稼ぐセイジは綺麗な猫に出会い…。

痛いほどに純粋な二人の魂は何度でも巡り合う。

1995年初演。初戯曲作品。

『無垢なもの』

(未童初期三部作)

「お前、生まれてきてよかったか?」

「チェック、通過、チェック、通過。あーちゃん、よしよししてもいいですか?」

人生最後の電車に揺られているヤクザの広志。
何故か自分のことをあーちゃんと呼び、くっついてくる知的障害のまさしと共に過ごすことに…。

『OUTSIDER』

(未童短編戯曲集)

「アウトサイダーとは
恐れぬもの 求めぬもの
疑いの炎と共にあるもの
皆の生死と共にあるもの」

施設で暮らす身体障害を抱えたバンニと知的障害のネル。障害がなければ自由なのか。そもそも本当の自由とはなんなのか。

成長した二人が童話に込められたトシの本当の想いを見つけるお話。

『PARADISE LOST』

(未童短編戯曲集)

「人類はもう、滅びるんじゃないかな。
人はもう帰るべき楽園を失ったんだよ。」

いつかの日本。
富士の裾野にある、政府の再生プログラム施設「ゲットー」。Mとシカは、そこで監督者として働いていた。送り込まれた患者の未来は二択。プログラムを経て、社会に戻り奉仕者となるか、樹海で首を吊るか。
ある時Mの前に現れた不思議な青年との出会いによって、Mの中で燻っていた焔に再び火がつく。そして『生きる』ため、Mもまた樹海の奥へと入ってゆく…。

『エデンの園』

(未童短編戯曲集)

「あなた、今急ぐって言ったで
しょう」

「ああ、言った。」

「可笑しい。だって急いでも、
もう仕方ないのでしょう?」

男が寝間着姿の若い女を背迫い歩いている。葉は枯れ雪が降り、瞬く間に移り変わる季節。
どこに行こうとしているのか、ここがどこなのもわからず歩き続ける男。とりとめもなく続く二人の会話。
二人は一体どこにたどり着くのか?

『花の子供』

(未童短編戯曲集)

「きっと君は誰かに無理やり...そして、殺されたんだね。この僕はきっと、誰かを無理やり、犯し、そして殺した。」

男と女。兄と妹。そして、加害者と被害者。
ある時は楽しそうに、ある時は恐怖に怯え、あてもなく荒地を歩く二人。
善悪を超越した生命のエネルギーを焦点に、神話や性犯罪を交えながら性差について描く。

『月光の娘』

(未童短編戯曲集)

ベルリンの病室で目を覚ましたダンサーの瞳。事故で片足を失い、それでも踊り続けると誓う彼女には、ある過去があった。

とある島の、3月11日。

湯流の音と沈黙が交互に押し寄せる。
壊れかけていく世界の中で、託されたそれぞれの思いを、瞳はただ静かに見つめ、そして踊り続ける。

『想い出がなくとも生きていける』

(未童短編戯曲集)

「もし、想い出を作らず、それでも人は生きられるのなら、なんだかもう一度、生きてみてもいいな、て、なぜか、唐突に、本気で、いま、思ったの。
って、もし、生きてたらこのことを後でSNSで呟くために、頭にメモしました」

SNSの投稿をきっかけに出会った、ミヤギ、コマ、ヨシノ。
お互いのことを想い出に残さない。そう約束して、三人は旅に出る。

『ANGIE』

「よーく見てごらん。ほんとうに見えてくるはずだ!この場の時間を巻き戻すんだ。時間なんて波しぶきとおんなじ、ただ変化するだけ。」

櫻子が大学生時代アルバイトしていたカフェ”ANGIE”。オーナーの智世はいつも店の一角の壁を眺めていた。
バイトを辞め十年が経ったある日、今はもう運航しているはずのない青函連絡船の上で、櫻子は智世と再会する。

二人を繋ぐものとは一体。